「既存のLED照射機では、どうしてもうまくいかない…」
ものづくりの現場では、扱う製品の大きさや形状によって、市販の設備では対応しきれない課題に直面することがあります。
効率、品質、コスト。これらを追求する中で生まれる「こんな装置があったら」という切実な声。

私たちは、そんなお客様一人ひとりの声に耳を傾け、光硬化技術を核としたソリューションを提供する技術者集団です。
私たちは、UVパテ「Glanz neo」をはじめとする光硬化樹脂と、その効果を最適化する専用照射機の開発・製造・販売を一貫して手掛けております。樹脂と機器の双方を熟知しているからこそ可能な、最適なソリューションをご提案します。

今回は、あるお客様の特別なご要望にお応えして開発・製作した「特注ロングタイプUV照射機」の事例をご紹介します。市販品にはない、たった一つの製品が生まれるまでの約4ヶ月間。その開発の裏側にあった挑戦と、私たちのものづくりへの想いをお伝えします。

発端:お客様が抱えていた「長さ」という課題

今回ご相談いただいたのは、特殊な工業製品を製造されているお客様でした。その製造工程には、光硬化樹脂(UV硬化樹脂)を塗布した、長尺のワーク(加工対象物)を連続的に硬化させる工程がありました。

お客様が抱えていた課題は、非常に明確でした。

「現場のワークサイズに適合する、長くて均一に照射できるUV照射機が存在しない」

従来の方式では、小型の照射機を複数台並べて使用したり、照射機の前をワークが複数回往復したりする必要があり、以下のような問題が発生していました。

生産性の低下: 照射に時間がかかり、タクトタイム(製品一つを製造する時間)が伸びてしまう。

品質のばらつき: 複数台の照射機では光の繋ぎ目にムラができたり、往復させることで硬化の均一性が損なわれたりする。

スペースとコストの問題: 複数の装置を設置するためのスペース確保と、設備投資の増大。

お客様が理想としていたのは、「一度の照射で、長いワーク全体を均一かつ強力に硬化させられる、一本の長い照射機」「しかもハンディタイプ」でした。

さらに、ただ長いだけでは意味がありません。硬化品質を担保するため、弊社が誇る高性能LED照射機「UXH-10GND」と同等の高いUV強度と、弊社が誇る高性能LED照射機「UXH-10GND」と同等の高いUV強度と均一な照射性能が、その長い照射エリア全体で求められたのです。

技術的挑戦:開発チームを阻んだ「3つの壁」

「高性能を維持したまま、照射部を長くする」。
言葉にすればシンプルですが、その実現にはいくつもの技術的な壁が立ちはだかります。
設計段階で主に3つの大きな課題に直面しました。

長尺照射機の開発課題と解決策

小ロット・低価格でのご提供を実現するために、高性能な長尺照射機の開発において、以下の課題を解決しました。

課題1:照射ムラ
問題点:長い照射エリアにわたって光の強さを均一に保つことが難しい。
解決策:光学設計を突き詰め、LEDチップの選定と配置を最適化した。

課題2:排熱問題
問題点:高出力LEDの熱が性能低下や短寿命化を招く。
解決策:空流解析を行い、冷却ファンとヒートシンクを最適配置した。

課題3:筐体の強度
問題点:長尺化による「たわみ」と、剛性確保による「重量化」の二律背反。
解決策:シミュレーションにより、軽量かつ高剛性な筐体構造を設計した。

課題4:部品の選定
問題点:小ロット生産では、部品の単価が割高になりがちです。
解決策:設計を見直し、特殊な部品ではなく、広く流通している汎用部品を積極的に採用しました。
    これにより、調達の安定化とコストの抑制を両立させています。

お客様と共に創る:設計から製作、そして完成へ

これらの技術的な壁を乗り越えるため、開発チームは週に一度の定例会議でお客様と密なコミュニケーションを重ねました。進捗を共有し、細かな仕様を一つひとつ確認していきます。

「ファンの音は、現場の作業環境に影響ないレベルに抑えたい」 「ケーブルの取り出し口は、・・・」

こうした現場の生の声は、図面だけでは見えてこない、本当に「使いやすい」装置を創る上で何よりも重要な情報です。私たちはお客様を単なる発注者としてではなく、最高の製品を共に創り上げる「パートナー」として、プロジェクトを進めていきました。

設計が固まると、いよいよ自社工場での製作が始まります。精密に加工された部品が届き、熟練の技術者の手によって、一つひとつ丁寧に組み上げられていきます。心臓部であるUV-LEDユニットの実装、複雑な配線、冷却システムの組み込み。ミクロン単位の精度が求められる作業が、確かな技術のもとで進められていきました。

そして、開発開始から約4ヶ月。ついに、「特注ロングタイプUV照射機」が完成したのです。

完成した照射機は、社内の評価設備で徹底的な性能テストを受けました。長い照射エリアの隅から隅までUV強度が設計値通りか、長時間連続運転しても温度は安定しているか、振動や衝撃に対する耐久性は十分か。厳しい品質基準を全てクリアし、私たちは自信を持ってお客様の元へ製品を納品しました。

お客様の工場で無事に設置が完了し、実際にワークを流していただいた際の、担当者様の安堵と喜びの表情は今でも忘れられません。「まさに、これが欲しかったんだ。生産性が劇的に改善し、品質も安定した」という、最高のお言葉をいただくことができました。

まとめ:私たちが「特注」に応えられる理由

今回の事例は、私たちの強みを象徴しています。

課題解決力: お客様の漠然とした「こんなものがあったら」を、具体的な技術要件に落とし込み、解決策を提案します。
総合的な技術力: 化学、光学、熱、構造、電気制御といった多岐にわたる専門知識を統合し、最適なソリューションを自社で設計・開発できます。
一貫生産体制: 設計から開発、部品調達、製造、品質保証までを一貫して自社で行うことで、高い品質、柔軟な対応、そして迅速な納品を実現します。

私たちは、光硬化製品(UV硬化樹脂やUVパテなど)を開発・販売するだけでなく、その効果を最大限に引き出すための専門的な装置開発も得意としています。製品と装置、その両方を深く理解しているからこそ、お客様の課題の本質に寄り添ったご提案ができるのです。

製造現場における課題は、千差万別です。「こんなことは無理だろうか?」と諦めてしまう前に、ぜひ一度、私たちにご相談ください。