UVパテ、あるいは光硬化パテと呼ばれるものは、その名の通り紫外線などの光を照射することで硬化するパテです。
従来のパテは、主剤と硬化剤を混ぜ合わせることで化学反応を起こし硬化しますが、UVパテは紫外線がその反応の引き金となる点が大きく異なります。
では、UVパテはどのようにして光で硬化するのでしょうか?
その秘密は、パテに含まれる光重合開始剤にあります。
硬化の原理
組成物に使用される材料(ラジカル重合の場合)
初めに、光硬化製品の組成物に使用される材料は、ラジカル重合の場合、大きく分けて以下の3つの成分から構成されます。
- 光重合開始剤
- 重合性モノマー/オリゴマー
- 添加剤
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1. 光重合開始剤
前項でも説明しましたが、光重合開始剤は、光を吸収してラジカルを発生させることで重合反応を開始する役割を担います。
役割:硬化を開始させるための起爆剤・引き金
2. 重合性モノマー/オリゴマー
重合性モノマー/オリゴマーは、光重合開始剤によって生成されたラジカルによって重合し、硬化物を形成する成分です。 主にアクリレート系、メタクリレート系、ビニルエーテル系などが使用されます。
役割:硬化物の基本的な物性、ハンドリング性、希釈剤
3. 添加剤
添加剤は、光硬化製品の性能や機能を向上させるために添加される成分です。 以下のようなものが挙げられます。
- 安定剤: 光や熱による劣化を防ぎ、保存安定性を向上させます。
- 増感剤: 光重合開始剤の感度を高め、硬化速度を向上させます。
- 可塑剤: 硬化物の柔軟性を向上させます。
- 着色剤: 硬化物に着色します。
- 充填剤: 硬化物の強度や耐摩耗性を向上させます。
役割:ユーザーが扱いやすくするために添加するもの、機能を付加
これらの材料を適切に組み合わせることで、目的の特性を持つ光硬化製品を製造することができます。
光重合開始剤の役割
UVパテには、光に反応する特別な物質である光重合開始剤が配合されています。
この光重合開始剤は、特定の波長の光を吸収すると活性化し、パテの主成分である樹脂の分子同士を結合させる反応(重合反応)を引き起こします。簡単に言うと、光重合開始剤が特定の波長の光を浴びることで、パテの中の分子たちが手をつなぎ始め、それが全体に広がることで固まっていく、というイメージです。
硬化の一例(ラジカル重合の場合)
UVパテの原材料の中で、主な硬化体になるモノマーやオリゴマーに、どんなに光を照射しても硬化しません。光で硬化する材料の中には、2液型パテの硬化剤のような役割をするものが含有しています。それは、「光重合開始剤」です。
以下の図をご覧ください。UVパテに、特定の光を照射すると、光重合開始剤は、光を吸収し強いエネルギーを発生します。その後、光重合開始剤は、強いエネルギーによって開裂し、二つ以上のラジカルを発生します。このラジカルは、モノマーやオリゴマーに反応し、隣り合ったモノマーやオリゴマー同士を結合させます。この反応は、ラジカルがなくなるまで、または反応するものがなくなるまで続きます。このようにして、反応が完了するまで光を照射し続けることにより、硬化反応が停止します。
硬化時の酸素阻害(ラジカル重合の場合)
下図は、酸素の影響を説明しています。
なお、「酸素阻害」について詳しく知りたい場合は、ここをクリックしてください。
以下の図をご覧ください。ラジカルが発生するところまでは、上図と同じです。
ラジカルが発生するところまでは、上図と同じです。異なる部分は、ラジカルが酸素と触れ合う反応です。ラジカルは、強いエネルギーを持っている反面、酸素と いとも簡単に結合してしまい、モノマーやオリゴマーへの攻撃をやめて しまいます。具体的には、ラジカルは酸素と反応してパーオキシラジカル(不活性)を生成し、連鎖反応が停止します。これにより、モノマーやオリゴマーは攻撃を受けにくくなり、硬化が阻害されます。その結果、光の照射を続けても表層部の硬化が進まず、タック感やべたつきが残ってしまいます。これが酸素阻害のメカニズムです。
UV硬化製品の用途
UVパテは、その優れた特性から、様々な分野で利用されています。
- 模型製作: 細かい部分の修正や造形に最適です。
- ジュエリー製作: アクセサリーの修理やデザインに活用されています。
- 歯科医療: 歯の修復や詰め物に用いられています。
- 工業分野: 電子機器の接着やコーティングなどにも使われています。
- 自動車の生産ライン:ヘッドライトのリフレクターのコーティングや、ポリカーボネートのハードコート、内装のクリアーコートなどに使われています。
- 人に対して使用するもの:ネイルに使用されています。
- 建築:床(フローリング)の製造時に、表面のハードコート剤、ユニットバス、木工の補修として使用されています。
- 印刷業界:印刷用インク
- 生産ライン(工業系):鋳物の肌調整、ドア、ピアノ、スマホ等
- 全般:接着剤、携帯電話の保護膜(コーティング)、電子基板のレジスト
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