日々、お客様の大切な車を綺麗に修復されている板金塗装のプロの皆様へ。
パテ埋めは板金塗装の基礎でありながら、仕上がりの美しさを大きく左右する重要な工程です。
今回は、パテの浮きを最小限に抑え、高品質な仕上がりを実現するためのプロの技を改めて確認していきましょう。
パテ浮きが発生する原因とメカニズム
パテ浮きは、主にパテと下地、あるいはパテと上塗り塗料との密着不良によって発生します。
その原因を深く理解することで、未然に防ぐための対策を講じることが可能になります。
パテ浮きが発生する主な原因
- 下地処理不足: 油分、水分、錆、旧塗膜などが残っていると、パテの密着性を阻害します。
- パテの混合不良: 硬化剤の量や混合状態が不適切だと、パテが十分に硬化せず、脆弱になります。
- パテの厚塗り: 厚くパテを盛ると、乾燥時の収縮が大きくなり、ひび割れや浮きが発生しやすくなります。
- 研磨不足: パテと旧塗膜の段差が残っていると、応力集中が起こり、浮きの起点となります。
- プライマーの不適切な使用: プライマーの種類や塗布方法が適切でないと、密着不良を引き起こします。
- 乾燥時間の不足: 各工程で十分な乾燥時間を確保しないと、溶剤が抜けきらず、密着不良やパテの収縮が起こります。
- 温度・湿度の影響: パテの硬化や乾燥に適さない環境下では、品質が低下しやすくなります。
パテ浮きを防止するためのプロの技術
徹底的な下地処理
- 旧塗膜は、パテを乗せる範囲よりも広く、鉄板が露出するまでしっかりと研磨除去します。
- グラインダーを使用する際は、熱による鋼板の歪みに注意し、適切な番手のペーパーを使用します。
- 鉄板の露出部分から塗膜面に対してフェザーエッジを作る際は、なめらかなつながりをつくるよう意識して研ぎます。
この際、塗膜1層あたり1cmの幅で作り上げることで、パテと旧塗膜のつながりが良くなり、パテのヒケによるパテキワの発生も抑制できます。 - 脱脂は、シリコンオフ等で、確実に油分・水分を除去します。
脱脂後は、エアーブロー等で、確実に水分等を飛ばします。 - 錆が発生している場合は、錆転換剤などを用いて適切に処理します。
適切なパテの選択と混合
- 損傷の状態に合わせて、ポリパテ、ラッカーパテ、ファイバーパテなどを適切に使い分けます。
- 硬化剤は、メーカーの指示に従って正確に計量し、パテと均一に混合します。
- 混合には、パテ板とヘラで、均一な混合状態にします。(熟練の技が必要)
パテ盛りの技術
パテを塗布する際は、ヘラを適切な角度で持ち、薄く、均一に、かつ素早く作業を進めることが重要です。
特に、最初のひとしごきは、 足付け溝にパテがきっちり入り込むように、薄く薄く 意識して塗布しましょう。
この時、パテを一度に大量に盛るのではなく、 少量ずつ ヘラに取り、丁寧に塗り込んでいくことがポイントです。
このように、 「薄く、少量ずつ」 を心がけることで、
- パテの密着性向上: 足付け溝にパテがしっかりと食い込み、下地との密着性を高めます。
- 乾燥時間の短縮: 必要に応じて、複数回に分けてパテを薄く塗布することで、パテの乾燥時間を短縮し、作業効率を高めます。
- ひび割れ防止: 厚塗りを避けることで、乾燥時の収縮によるひび割れのリスクを軽減します。
- 研磨作業の効率化: パテの盛り付けが薄ければ、研磨作業もスムーズに進みます。
- パテの硬化を促進するために、赤外線乾燥機(パネルヒーター等)などを活用します。
パテ盛りは、仕上がりの美しさに直結する重要な工程です。 焦らず丁寧に作業を行い、美しい仕上がりを目指しましょう。
正確なパテ研磨
- 荒目から細目へと段階的にペーパーの番手を上げ、丁寧に研磨します。
- 研磨ブロックやサンディングペーパーホルダーを使用することで、均一な研磨面を得られます。
この際、力を入れずに滑らすイメージで研磨していきます。
無駄な力は、研磨面を自身で凹凸を作ることになります。 - 曲面部分では、柔軟性のある研磨パッドやスポンジ研磨材などを活用します。
- パテと旧塗膜の境目は特に注意深く研磨し、段差を完全に解消します。
- 研磨後は、エアーブローやブロアーガンで研磨粉を完全に除去します。
プライマーの選定と塗布
下地の材質や使用するパテの種類、上塗り塗料との相性などを考慮して、適切なプライマーを選択します。
例えば、むき出しの鉄板に対して使うプライマー、PP(ポリプロピレン)の素地に使用するプライマーなど、それぞれにあったプライマーを選択します。
プライマーは、下地とパテ、またはパテと上塗り塗料の密着性を高めるために非常に重要な役割を果たします。
しかし、その効果を最大限に発揮させるためには、薄く、均一に塗布することが極めて重要です。
**「とにかく薄く薄く」**を意識しましょう。
プライマーを厚塗りしてしまうと、密着不良の原因になります。
十分な乾燥時間の確保
- パテ、プライマー、塗料それぞれの乾燥時間をメーカーの指示に従って厳守します。
- 乾燥不足は、密着不良やパテの収縮、剥がれなどの原因となります。
- 寒い日(低温時)は、鉄板等をヒーターパネルや塗装ブースを使用し、温めてから塗布することで安定した作業環境を確保できます。
環境管理
- 作業場を清潔に保ち、埃やゴミの付着を防ぎます。
- 温度や湿度を適切に管理することで、パテの硬化や乾燥を促進し、品質向上に繋がります。
自動車用パテには光硬化パテもおすすめ!
自動車のパテ塗り技術にお悩みの方は、光硬化パテを選ぶのもおすすめです。 当社の光硬化パテ「Glanz neo」は、専用の照射機で光を当てることにより硬化するため、納得いくまで仕上がりを追求できます。さらに、光に反応する物質がなくなることで硬化収縮が終わるため、2液型パテのように作業後の「ヒケ」が発生することがほとんどありません。
伸びが良く扱いやすいうえ、乾燥待ち時間も大幅に短縮できるので、作業にかかる人件費や教育コストの削減にもつながります。
「Glanz neo」は、コスト削減、高品質な仕上がり、そして優れた作業性を実現する次世代のパテです。 今ならGlanz neoのミニサイズを1週間お試しいただけますので、気になる方はぜひお問い合わせください。
まとめ
パテの浮きを防止するためには、上記のポイントを踏まえ、各工程を丁寧かつ正確に行うことが重要です。
プロの技術と経験を活かし、お客様に最高の仕上がりを提供できるよう、日々研鑽を続けましょう。